2024.05.06 05:13そんなバレンタインもおいしい 喧嘩をしてしまった。珍しく。「本当、信じらんない!俺、めちゃくちゃ心配したんだから!!なんで連絡もしてくんないの!?」「……」「制服も血で汚れてるし……!」「……これは俺のじゃない、返り血」「そんなんどっちだって駄目だよ!もー、後で血抜きしないと……」 ブツブツと文句を言う。なんとなく所在なさげにしているましゅうくんに、早くお風呂入って来て!と怒りをぶつける。 ましゅうくんは何も言わず、素直に俺の指示に従って脱衣場に入って行った。 喧嘩はもうしない、危ない事には関わらない、暴力を振るう人間とは縁を切る。誓いを立てさせたのに、ましゅうくんは今日それを破った。しかも、バレンタインの日に。夕食後にはチョコケーキでも焼いて一緒に食べようと約束していたのに、夜...
2024.05.06 05:09つまみ食いが一番美味しい1 じゅうっと心地の良い音がキッチンに響いた。 衣を纏った豚肉の周りに、黄金色の細かい気泡がとめどなく溢れる。揚げ物をしている時の、一番楽しい瞬間だ。 衣が薄く色付いたら一旦取り出してトレイに移し鍋の火力を少し強め、二度揚げをする。二度揚げにすると綺麗に揚げられると、昔おばあちゃんから聞いた気がする。暫くしたら衣がこんがりきつね色に変わったので、鍋から取り出しキッチンペーパーの上で油をよく切ってまな板の上に移す。そして、包丁を取り出し入刀。 ザクザクと子気味のいい音を鳴らし、食べやすい大きさに切ってあげる。一個は小さめに、もう一個は少し大きめに。「よしよし」 外はサクサク、中はしっとりジューシーなとんかつの完成。今日もいい仕事が出来た。そしてそう思った...
2024.05.06 05:06毒にも薬にもなれないから1 気の毒の男『私が君を助けてあげる、はじめくん』 差し伸べられたその手を掴んでから、俺は一生この方に仕えて生きていこうと決意した。 教祖様は俺の憧れであり、生きがい。彼以外は何もいらない。彼の言う事だったら何でもできる。彼は俺の全て。 俺の人生は教祖様の存在だけで完結していた。 そのはずだったのに。「どうか私の悩みを聞いてくださいませんか、スズ様」 最近入信した女性が、教祖様であるスズさんに膝をついて頭を垂れている。 スズさんは、まるで天使のように作り物めいた顔に微笑みを浮かべ、その女性を見下ろしていた。「顔をあげてください。幸せでない信者を助けて差し上げるのは、私の使命です。どうぞ、なんなりとご相談ください」「……!スズ様、ありがとうございます、あ...
2024.05.06 05:03「両替して!」1「両替して!」「は……?」 お目当てのガチャガチャを背に、極上のイケメンを前にして、手を合わせてお願いをする。なんの説明も無しに今まで話したこともなかった男が金銭のやり取りを要求してくるのだ。この反応は無理も無いだろう。 これに至る経緯を説明すると、俺が最近ハマったアニメから始まる。 『うさにゃんエイリアンず』という、今期放送しているゆるアニメに俺はハマってしまった。うさぎなのか、ねこなのか、よくわからない宇宙生物『うさにゃん』が地球を侵略しにくる話。 俺はそのシュールさとキャラクターのゆる可愛さに惹かれてハマってしまったのだが、今期アニメなのに全く話題にされておらず、俺の友達の斉藤と鈴木にも驚くほど刺さらなかった。 そのうさにゃんエイリアンずのガチ...
2024.05.05 14:35Laugh at my LONG,LONG,LONG 12 years. 211.16歳、真っ青で熱くて酷く痛い 高1になった。言うまでもないが、俺は諦めていなかった。 また3年間新たな境地で生活できるのだと思うとワクワクする。気持ちも新たに、初心に帰って、なんならちょっとウブな感じを演出してみたり。「律樹、す、す、す、好きです、つ、つつ、」「付き合いません」「最後まで言わせてよ!」 新たな制服に身を包んでいる律樹。中学は学ランだったが、高校からはブレザーになった。そんな律樹も美しすぎて、改めて見るとなんだか緊張してしまった。10年ほど一緒にいるのに、未だに新しい姿を見るだけで緊張できるのも俺くらいだろう。「はあ〜、ブレザーな律樹かっこいいな。写真撮っていい?」「あー、駄目駄目。事務所NGだから」「あ、そっか」 この事務所NG...
2024.05.05 14:29Laugh at my LONG,LONG,LONG 12 years. 11.6歳、それはまるで手持ち花火のように 思えば、俺は酷く感銘を受けやすい子どもだったような気がする。「じゃあ次は仁くんの番ね。このね、先の方を持つの。……あ、違う違う、そっちじゃなくて反対。……いや、裏表反対じゃなくて……、ああ、違うの、反対の手で持つんじゃなくて、ええっと、今地面の方を向いている、細い方を手に持って。ああ……そんな火薬ギリギリ……。もっと端っこの方持とっか。あ、そうそう!そしたら、腕を真っ直ぐ前に伸ばして、火が体に当たらないようにね。……あはははっ!選手宣誓!?んふふ、そうじゃなくてね、もっと腕下げていいよ、うん、そうそう!そのまま……ここに火をつけるからね」 当時、俺、6歳。初めての手持ち花火だった。 幼稚園年長で大分言葉を習得し...
2024.05.05 08:01バレンタインそれぞれ1. 斜森と付き合っている場合のバレンタイン「ほい」「え」 仕事が定時になったので帰る支度をしていたら、斜森はまだ残ってやる事があると言っていたので斜森を置いて先に帰った。そして、遅れて俺達の部屋に帰ってきた斜森はハンガーにコートをかけて、そのままの流れで俺に四角い箱を渡してきた。数秒考えて、それがバレンタインのチョコだと理解する。「え……斜森ってこういう事するんだ」「駄目かよ」「いや、ちょっと意外だったから……ありがとう」 ほとんどの時間を一緒に過ごしているのに、いつの間に用意したのだろう。斜森はこういう所がある。 中を開けると、6つ種類の違う美味しそうなチョコが並んでいた。あまり詳しくないけど、多分有名なお店のチョコだろう。「多分美味しいと思うけ...
2024.05.05 06:00呼び水 泥水は底に溜まったままだった。誘い出すための水すら周りになかった。 彼と同じ苗字になった日から、その名を誇れと言われてきた。トップであり続けろ、他の上に立て、周囲を支配するんだ。出来ない人間は王野を名乗るな、と。 前の父親は暴力で俺を支配していた。次の父親は、言葉で。俺の父親になる人はそういうものだと思っていた。だから、そうなるように努めるのは当たり前だった。それだけが生きる道筋だった。逆らったら、きっと昔のように俺から大切な物が消えていくんだと思い込んでいた。その時にはもう大切なものなんて既に1つも残っていなかったのに。 だから、本当に大切にしたいものが出来た時、俺はやっと生きていけると思った。俺を汲み上げてくれるのは昔からずっと、1人しかいない。...
2024.05.05 05:58字が下手って言われました。だから練習で日記を書きます。7月1日(月)字がへたって言われました。 だから練習で日記を書きます。字がきれいに書けたらお父さんもほめてくれるかな。7月2日(火)今日はきゅう食でカレーが出ました。家のカレーは少しからいので苦手です。学校のはあまくておいしいです。7月3日(水)この日記は持って帰れないから、じゅ業がおわってから学校で書いてます。教科書とノートは学校においていったらおこられるけど、日記はだいじょうぶかな。7月4日(木)きのうの夜の事を書こうと思ったけど、わすれました。今日は理科の実けんで、虫めがねを使って紙をもやしました。おれのまわりが虫めがねだらけじゃなくてよかったです。7月5日(金)きのうの夜の事またわすれた。うでのいたい所、ナナがなめてきました。ナナはビーグルの女...