【女体化】バレンタインなので、幼馴染達にチョコをあげよう

⚠注意⚠

ゴコイチ女体化のにょたゆりです。

女子高設定です。

苦手な方は見ないでね。






「チョコ、作るか」


 2月13日の放課後、私は自宅のキッチンに立っていた。チョコ、作るか。

 うっかりしていた。気付いたらもう明日だった。なんにも考えてなかったし、なんにも用意していなかった。どこのスーパーに行っても重要そうな材料は売り切れていて、今手元にあるのはお一家族3枚までとポップが出ていた板チョコ3枚のみ。溶かして形成し直すしかない。頭の中の幼馴染達がそんなんでチョコ作ったって言えるのか、と囁いている。


「手を加えた段階で手作りチョコカテゴリーだから、ヨシ」


 1人で勝手に言い訳をして、チョコを湯煎で溶かした。奇跡的に家にあったハートの型にそれを流し込み、冷蔵庫に入れる。終わった。

 あとは明日の朝適当に袋に詰めればいいや。


 どうしよう。一応作ったけど、こんなの誰が喜ぶんだろう。もし貰ってくれなかったらその場で泣きわめいて持って帰ってお母さんにあげよう。と、自信がなさすぎてここまで考えた。

 翌日、14日になり、俺はシンプルにラッピングした袋4つを鞄に入れて登校した。





1. 五藤にあげよう!


 五藤にあげよう。多分一番捕まらないだろうから、もうさっさとあげてしまおう。

 校門をくぐってすぐに何かの塊……黄色い歓声が上がる集団が見えた。核を見なくても誰か分かる。さっさとチョコあげるどころか、これを待っていると授業に遅れてしまいそうだったので諦めて横をスルーする事にした。


「おい、一宮!」

「グエエ」

「ごめんみんな、また後でね!」


 横を通り過ぎる寸前、爽やかに笑顔を浮かべる五藤に軽くチョークスリーパーをキメられ、潰れた蛙のような悲鳴をあげる。五藤の周りにいた女子達が口々に不満の声を上げ、そして五藤の腕の中にいる人物__私をじろりと睨む。私はそのまま五藤にズルズルと連行されていった。


「っ、おいっ!やめろよ!」

「ごめん、手が出た」

「ごめんで手を出すな、倫理どうなってんだ!」

「倫理って言葉覚えたんだ」

「覚えました!じゃなくて、ああいうのやんなよ、後で目つけられるの私なんだから!」

「私が必死に助けてってハンドサイン送ってたの分かんなかった?」

「分かんなかったし、分かっててもあれは助けられない」

「冷たいな。私だったらすぐ一宮の事助けるけど?」


 目を細めて私の顔を覗き込む五藤。マジでこいつタラシ。しかもナチュラルに私の腰に手を回してる。こういうのを不特定多数にやる上、自覚がないみたいだからタチが悪い。そりゃあ入学して1ヶ月で女子校の王子様ポジションの座につける訳だ。


「……五藤は男より強いからな」

「ははは」

「グエエッやめっ、すみません、ごめんって」


 もう一度絞め技をかけられ、五藤の腕をバシバシと叩いた。多分本気じゃなくてこれだから、五藤は変に怒らせられない。


「今ので何個貰った?」

「えー、いくつだろ、いち、にい、さん……」


 五藤は手に提げていた紙袋を持ち直し、その中に入っているチョコの数を数え出した。15を超えた時点で私も飽きてきてストップをかけた。


「もういいです、はい、今年も凄いですね」

「自分で聞いといてキレんなよ」

「キレてないし!」

「まあまあ、多すぎても食べるの大変だよ」

「えっ何今日の五藤すっごいムカつく、じゃあいらないですか、もういらないですよね、多くても食べるの大変ですもんね」

「え?」


 俺は鞄から昨日作ったあまりにも貧相なチョコを取り出した。取り出したけど、なんだかいろいろ考えて自己嫌悪し、鞄にしまった。


「お母さん行きか……」

「待って待って待って」


 鞄に入れた手をガシっと、ゴリラみたいな強さで掴まれた。そのまま無理矢理引っ張られ、ハートのチョコがもう一度姿を現す。自信がなさすぎて保身のための言い訳が出てくる。


「材料売ってなくて、溶かして固めただけです……五藤が貰ったやつと比べ物になんないよ」

「それ、何チョコ?」

「え?」


 てっきり馬鹿にされると思ったから、ぽかんとして五藤を見上げた。五藤は真剣な顔をしている。何チョコ、とは。


「え……メイジの……」

「……」


 五藤は渋い顔をして、はあーーー、と長いため息を吐いた。は?


「え?ガーナ派?」

「いや……そういう事じゃないんだ……」

「グルメすぎる女はモテないぞ」


 五藤にジト目で見られ、両のこめかみを拳でぐりぐりされた。痛い。頭割れた?大丈夫?五藤に訴えると、大丈夫と返ってきたので、大丈夫なようだ。


「はあ、……まあ、一宮はそうだよな。それ、くれるの?」

「え、ほしい?」

「うん。一宮が作ったんでしょ?」

「うん……」

「ほしいな。誰のよりもほしい」


 五藤が手の平を差し出す。とにかく顔がいいな。ズルくない?そんな顔でそんな事言って。あげるしかないじゃん。私はおずおずとその手にチョコを置いた。受け取った五藤は、にっこりと笑っていて、こんなので?と、こっちが心配になった。


「ありがとう。3倍にして返す」

「じゃあ私リンツのめちゃくちゃ甘いやつ食べたい」

「厚かましいな……」





2. 四ツ谷にあげよう!


 四ツ谷にあげよう。後の方になるとスネるだろうから、早めに渡そう。


 お昼休みになり四ツ谷のクラスに行ってもいなかったので、購買か?と思い1階に降りた。すると玄関前に四ツ谷らしき後ろ姿を見かけた。……らしきというか、四ツ谷はこの学校の生徒の中で一番身長が高いので、この細長いシルエットは四ツ谷確定。


「よつ__」


 名前を呼ぼうとして、咄嗟に口元に手を当てた。でも時既に遅しだったようで、私の声に反応した四ツ谷と、四ツ谷の目の前にいた女の子がこちらを見る。その女の子はめちゃくちゃ可愛かった。量産型というのだろうか、髪型は毛先が綺麗に巻かれたツインテール、目はバサバサのぱっちり、短いスカート、細長い脚、そして、鬼の形相……。


「ヒエ、ごめんなさい……」


 涙声で謝る。これはアレじゃないか。もしかして、いいところなのでは。私、さっきから最悪のタイミングでみんなに会ってるな。


「四ツ谷さん、いつでもいいから、絶対に返事教えてね」


 女の子は私に向けていた鬼の顔を、中国の伝統芸能並の速さで超可愛い笑顔に変え、四ツ谷にそれを向けてその場をあとにした。去り際、四ツ谷にバレないように私の顔を睨み付けていた。


 こ、こえ〜……。


「……四ツ谷、なんであんなのにばっか好かれるの?」

「知らない……」


 四ツ谷はげんなりとした顔をしていた。その手には、さっきの女の子から貰ったであろう手作りのお菓子が包装された袋が握られていた。


「今日、チョコ何個貰った?」

「さあ、覚えてない。とりあえず今は1個。帰るまでに全部無くしたいけど」

「どういうカウント?なんで減点方式?」


 そのお菓子を持ち上げて、私に見せてくる。手作りなのに、売り物みたい綺麗だ。


「……一宮は、これ食べられる?」

「え、うん。美味しそうだけど」

「私は絶対に無理。何入ってるか分かんないし」

「疑いすぎじゃない?」


 四ツ谷は首を横にふるっと振った。重たい前髪が動く。


「……去年、血が入ったチョコを貰った」

「……………………え?ち?」

「うん。血、人の。作った人の」

「……エ!?」

「食べ終わった後にそれを言われたから、どうしようもなかったんだけど。だから他人から貰ったものは絶対食べない。市販でも食べない。貰ったチョコは、次にくれる子にこれ食べてって渡してる。だから今は1個だけ」

「お前……そんなんするから変なのに好かれるんだよ……。バレたらどうすんの、怖えよ」

「私以外の周りの人達でキャットファイトさせる」

「ア、四ツ谷が一番怖いわ」


 狂ってるな、四ツ谷も、四ツ谷の周りの人間も。

 こんな事を言われてしまって散々迷ったけど、私は四ツ谷にチョコを渡す事にした。それを取り出して四ツ谷に見せると、物凄い目力でチョコを凝視していた。私はあっ、と思い、慌てて否定する。


「血とかは入ってないよ!」

「それ、何チョコ?」

「だからなんで???」


 なんで四ツ谷もそれ聞くの!?何チョコってなんだよ!!


「何……って、強いて言うなら、ハート型の普通のチョコ……」

「そのハート型に意味はあんの?」

「え?……意味?意味か……。意味ないな、家にあった型がたまたまこれだった」

「……」


 四ツ谷は五藤と同じようにどデカいため息を吐いた。はぁ?そんな反応されたらこっちだって不満なんですけど。


「……私が一宮に血入りのチョコあげればいいか」

「いらないです」

「他の体液の方がいいの?」

「そもそも体液は食べ物の中に入れちゃ駄目だよ」


 怖いんだよ、なんでそうなるんだよ。四ツ谷も、四ツ谷の周りの人間も、メンタルのヘルスがヘラヘラしやがって。私が救ってやらないと。

 いろいろ考えていると、四ツ谷はその長い胴体を屈めて私に顔を近付けた。そして口をぱかりと開ける。


「食べさせて」

「え?」

「一宮のチョコ」

「他人のチョコ食べられないんじゃないの?」

「特別枠」

「んー……はい」


 自分で食べろよ、と思ったけど、多分やらないとスネるだろうから、袋からチョコを取り出して四ツ谷の口に入れた。口が閉じる瞬間、唇が微かに指に当たってドキッとする。四ツ谷は満足そうに口を動かしていた。満足そうってのは、雰囲気で。相変わらず無表情だけど。


「割とみんな見てるからさ……こういうとこでこういうの、アカンと思いますよ。四ツ谷のファン怖いし。さっきの子とかが見てたらどうすんの?私、刺されたらどうする?」

「んー……。私が殺す」


 四ツ谷はフッと笑って自分のクラスに帰って行った。


 どっちを?その子を?私を?

 四ツ谷、どうか平穏無事に生きてほしい。





3. 三好にあげよう!


 三好にあげよう。三好は一日中チョコを配り歩いてるだろうから、昼休みの時間がある間に見つけて渡してしまおう。


「三好いるー?」

「いますよー」


 三好のクラスに行くと、意外と三好がいた。てっきりチョコ配りの練り歩きをしていると思ったのに。

 三好は教室から出て俺の元までやって来た。


「チョコ配らないの?」

「いっぱい作ったのにもうなくなっちゃった」

「人気者め」

「そう、私人気者なんだよ」


 なんだかんだ三好も五藤と並ぶくらいチョコ貰ってそうだな。こういう人にこんなひねりのないチョコをあげるの、本当に恥ずかしい。


「あの、これ」


 三好にチョコを差し出す。私の自信の無さに反して、三好はニコニコ〜!と笑ってそれを受け取ってくれた。


「嬉しい!ありがとう!私も一宮にあげる〜」

「え、無くなったんじゃないの?」

「取ってあるに決まってるじゃん。お馬鹿さん」

「なんで最後に悪口吐かれたか分からないな」


 三好は自分の机に戻って可愛くラッピングされたお菓子を私に渡した。


「えっすごい!なに、いっぱい!すごーい!」

「いっぱい作ったよ!他の子のやつはこんなにいっぱい入れてないよ。一宮は特別!」

「ワァー……」


 中を見てみると、トリュフやブラウニーやクッキーなどのいろんな種類のお菓子が入っていた。しかも美味しそう。

 駄目だ、めっちゃ嬉しい。私達の中で唯一バレンタイン当日にチョコくれる人。五藤も四ツ谷も二井も、自分は貰う側の人間だと思ってるからな。


「やっとチョコ貰えた……ここにきてこのクオリティは嬉しすぎる……ありがとう……」


 受け取る手が震える。やっぱり信じるべきは女子力の塊である三好だ。


「なんで私こんなにチョコ貰えないんだろ……」

「おっ」

「お?」

「今日貰ったの初?」

「うん」

「本当に?」

「うん……」

「無事?」

「無事って何?」

「んふふ」


 三好は目尻を下げ、そして広角は最大まで上げてにんまりと笑った。


「一宮、嬉しい?」

「うん、超嬉しい!」

「んふふ」


 もうすっごく嬉しかったので、それはそれは馬鹿みたいな笑顔で気持ちを表現した。

 すると、ふに、とほっぺに柔らかくて少し温かい感触がやってきた。よく分からず、何も出来ずに固まる。その感触が離れてようやく三好の方を見た。思わず三好の唇に目をやる。ふるふるのふわふわのピンク色をしている。


「……え?」

「ん?」

「なんで?」

「なんでって?」

「なんで今ちゅーしたん?」

「ん?」

「いや、ん?じゃなくて」

「一宮におねだりされたから……」

「は?」

「ちゅー嬉しいって言ったから。一宮も大胆だね」

「違うよ、超嬉しいって言ったんだけど」

「知ってるよ」

「いやなんでちゅーしたん?」

「んふ、一宮が可哀想だったから」

「お前可哀想でちゅーできんの?」

「一宮だけだよ」

「ああ、そう……?」


 それもどうかと思いますが。じゃなくて。私ははっとして周りを見渡した。普通にみんな見てるな。なんでこいつら公衆の面前でこういう事やるの?


「こんなとこでやらないで……」

「誰も見てなかったらいいの?」

「ああ、言い方間違ったな、そういう事じゃないんです……」

「大丈夫、あとでいっぱいしたげる。空き教室行く?」

「なんで私達上手に会話できないの?」


 三好って馬鹿なのかなあ。あ、馬鹿だったな。





4. 二井にあげよう!


 二井にあげよう。どうせ放課後一緒に帰るつもりだったし、帰りにあげよう。


 同じクラスの二井は、今日1日ずっとそわそわしていてなんか面白かった。他の子から大量に貰ってるはずなのに、多分私のチョコを貰うのを待っている。焦らした訳じゃないけど、ちょっと気の毒だな。


 一緒に帰ろうと二井に伝え、玄関まで行って、校門を抜けて、帰路を歩いている間ずっと何かを言いたそうにしていた。笑っちゃいけないけど、笑いそうだったので流石に渡す事にした。


「二井、これあげる」


 期待してたらこんなので申し訳ないけど、と言って差し出す。あんなにそわそわしていたんだから嬉々として受け取るんじゃないかと思ったけど、想像していた反応と全然違った。


「これは何チョコだ?」

「だからそれ何?流行ってんの?」


 揃いも揃って、みんな打ち合わせでもしたのか。何チョコって本当に何?


「逆に何チョコだったらいいの?」

「エ"ッ」

「回答によってはそのチョコになるけど」

「は……え……ほんっ……」

「……ほん?」

「ほん……」

「……」

「ほ、ほんっ……ほん……」


 その先がなかなか出てこない。何を考えているのか、二井はぐるぐると目を回している。ほん……。私はこの先を考えた。本気、本日、香港。


「本当にいつもサンキューな」


 はい、と無理矢理二井に渡す。


「ああ……ァ……」

「なんで泣いてんの?」


 びっくりした。二井が泣いていた。何の涙?


「嬉しくない?」

「いやもうマジめっちゃ嬉しいが」

「二井ってそんな言葉使うん?」


 二井は私があげたチョコを大事そうに両手で握りしめていた。溶ける溶ける。チョコレート初心者なのか。

 こんなに粗末なつくりなのに、ここまで喜ばれるとなんだか悪い気がしてくる。申し訳無さついでに、二井の希望でも聞いてあげようと思った。


「今ならなんか1個だけ願い事叶えてあげる」

「なんっ……何故!?」

「どうせ二井のお返し凄いのくるだろ。割に合わないよ」

「いやっ……」


 二井は私の提案を、多分最初は断ろうとしていたんだろうけど、口をぱくぱくと開閉させて暫く考えていた。こんな堅物そうな顔して、本当、欲望に忠実だな。

 そして二井は意を決したように唾を飲み込み、私に向き合った。


「抱きしめてもいいか」

「え……?あ、うん……?」


 なんで?真面目すぎて人生疲れたのかな。人肌恋しいのかもしれない。

 まあタダだし、と許可をすると、すぐさま二井に抱きしめられた。ふにゅん、と、ばふっと、そういう効果音が自分の顔から聞こえてくる。……おっと、口元がちょうど胸の位置に……。……いやコイツマジで乳デケ……。柔らかいとか恥ずかしいとかはとっくに通り越して……苦しいこれは……。温かみのある緩やかな地獄、幸せな苦行、羽毛布団の逆襲、翼の折れたエンジェル。最後のは違うな。


「んぶ……」

「スゥゥゥゥーーーーー……」

「ム……」


 え?これ絶対匂い嗅がれてるよな?私の頭らへんの匂い、嗅いでるくない?いや、嗅いでるというか……これは最早……吸い……一宮吸い……。

 そろそろ呼吸も限界なので、二井の背中をバンバン叩いて知らせると、二井ははっと気付いたように私を解放した。巨乳って凶器になりえるんだな。そして私は二井の顔を見て混乱した。


「は……?なんですかその顔……」

「いや……」


 この表情はちょっと私の語彙力では表現できないから割愛。とにかく、凄い顔をしていた。でもバレンタインの陽気に当てられてご乱心の二井はまだ終わらなかった。


「お返しは私の体でいいか?」

「いや、ゴディバがいいかな……」


 なんか、みんなちょっと変だったけど、ハッピーバレンタイン。ホワイトデー待ってるよ。








①一宮 守

守ちゃんなんて名前の女の子いるのかな?まあ、可愛いよね!

女の子になっても相変わらず幼馴染達にクソデカ感情向けられてる。この世界線でも友達は少ないしIQも高くないしちんちくりんで生きるのに必死!


②二井 虎太郎

虎太郎の名を持つ女の子は流石にいないと思うけど、この子はそうです。虎太郎ちゃん。

♂の時よりだいぶムッツリスケベだし大胆。巨乳。毎年ホワイトデーには一宮にとんでもねえ高級チョコをあげている。


③三好 叶斗

叶斗ちゃんも多分いないだろうけど、可愛いので大丈夫。

オタクに優しいギャル。とっても可愛いし、ちゃんと女の子の文化を楽しんでいる。すぐ一宮とスキンシップをとりたがる。実は一宮宛てのチョコは全部三好が回収していた。これは本人には秘密。


④四ツ谷 天音

天音ちゃんは割とアリ。

♂の時にはなかったメンヘラ属性が加わった。あと害悪そうな女にばっか好かれるから毎日大変。身長がとっても高いのを気にしている。


⑤五藤 空良

空良ちゃんはかなりアリ。

女子校の王子様。女子の集団の中だと抜きん出てかっこいいので本当にモテる。体力と運動神経とパワーは♂の時とほぼ変わらないので、つまりゴリラ。あと無自覚にキザ。








〜おまけ〜


5. 余ったので誰かにあげよう!


 このポンコツな頭は、とうとう1桁の数も数えられなくなったみたいだ。鞄の中にはもう1つチョコを入れた袋が入っていた。無意識のうちに5個作っていたらしい。誰かにあげよう。


「んー……友達いないし……あげられるの1人しかいない……」


 スマホを取り出して、幼馴染以外の唯一の友達にメッセージを送った。チョコいる?と。秒で返信が返ってきた。


『最高だね』


 つまり?これはあげてもいいのだろうか。いつものゲーセンにいるらしいので、そこに向かう事にした。


 ゲーセンに着くと、既にいろんな景品を獲得している彼女の姿が見えた。手に提げた大きい袋が少し膨らんでいる。


「一宮くん」

「千田くん!」


 両替機の前で、よ、と手を上げる。

 紹介しよう。彼女の名は千田環。他校の共学校に通う、幼馴染以外の私の唯一の友達。いろいろあって千田くん一宮くんと呼び合っている。かっこいいだろ。


「千田くん、チョコいっぱい貰ったでしょ」

「ん?そんな事ないよ」

「絶対嘘じゃん」

「本当だって」


 クスクスと笑っている。いやもう絶対嘘。共学校だとか関係なしに千田くんはチョコ貰える側の人間だろう。


「だから誰かがくれるの待ってたんだよ。一宮くんがくれるの嬉しいな」

「わぁ」


 ああ……これが天賦の才のモテテクニック……?さらっとやってるけど、なんだこの女。眩し過ぎて目が潰れそう。


「いや……こんなんで恥ずかしい……」


 顔をそむけながらチョコを渡す。千田くんはそれを受け取り、私の頭を撫で、ニコッと微笑む。


「なんで?美味しそうだよ。私はこういう普通のやつが一番好き。ありがとう、嬉しいよ」

「わぁ〜……」


 わぁ〜、心臓いてぇ。どこまでモテポイントを獲得するつもりだろう。勘違いしそうになる。私の学校にいたら間違いなくファンクラブが出来てただろうな。


「お返し。はい、これ」

「……え!?」


 千田くんは手に持っていたゲーセンの袋を私に差し出した。中を見てみると、見覚えのあるぬいぐるみが入っていた。


「前にこのぬいぐるみほしいって言ってたでしょ?」


 私はぶんぶんと頭を上下に振った。その必死な姿が面白かったのか、千田くんは笑っていた。

 これは私が数週間前に何回も挑戦して、結局獲得できなかったゆるキャラみたいな大きい恐竜のぬいぐるみ。凄いな、このホスピタリティ。千田くんってなんでこんなにかっこいいんだ?


「嬉しいっ……。本当にありがとう!」

「こちらこそ」


 千田くんに抱きつきたかったけど、流石に気持ち悪いかなと思ったので代わりに貰った恐竜をぎゅうぎゅうに抱きしめた。肌触り、ヨシ。それを見て千田くんはまた目尻を下げて笑った。


「可愛いね、一宮くん」

「え」

「うん、可愛い」

「……」


 カワ……kawaii……??

 聞き馴染みのない言葉すぎて、意味を理解して顔を真っ赤にする。


「かわっ……可愛いってアレか!?あの、赤ちゃんとか犬とか猫とかに使うアレ?」

「まあ、うん、大枠は。でもそうじゃなくて、ちゃんと女の子として可愛いなって思ってるよ」

「あ"あ"あ"」


 恥、恥恥。大恥。恥ずかしすぎて、顔を手で覆った。


「え?嫌だった?」

「いや……そんな事言われないから、ちょっと……お世辞でも恥ずかしいというか……」

「お世辞?本当だよ。一宮くん、可愛いよ」

「ア……もうやめて……」


 今まで生きてきて、1日でこんなに可愛いと言われた事なんてあっただろうか。物心ついてからは初めてなんじゃないか。体が熱い。ここサウナ?整わないな全然。ヒートショックで不整脈が。


「幼馴染達によく言われない?可愛いって」

「言われないよ、そんなの。もうずっと昔から一緒にいるから、今更そんな事思われないよ、絶対」

「……へぇ。私が言おうか。毎日言ってあげる。一宮くん、可愛いね。すっごく可愛い。堪んない」

「んんぅ〜〜〜!耳元で言わないでェ〜〜〜!」

「ハハハ」


 耐えきれなくて千田くんから距離を取ると、千田くんはごめんと言って微笑んだ。完全に揶揄われたな。


「惜しいね。あとちょっとだと思うんだけどな」

「……なにが……」

「ううん、なんでも」


 なに、その意味深な。なんもない訳ないじゃん。

 今日は千田くんもおかしいようなので、ちょっと怖くて足早にゲーセンから離れた。


 とんでもない量のメッセージが4人から届いていたのを知ったのは、帰って三好のお菓子を食べてる時だった。








●千田 環

環ちゃんもアリだね!

こんな女、実際にいたらめっちゃ嫌だな。男も女も食ってそう。一宮の事は本当に可愛いなと思ってるし、計画的に落とそうとしてる。


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